漆喰の劣化から起こる瓦のズレ・瓦の割れ｜補修方法と費用相場、施工事例を紹介します
日本の伝統的な瓦屋根には部分的に『漆喰(しっくい)』が詰められているのをご存知でしょうか。
屋根の漆喰は雨水の浸入を防止したり、美観を保ったりと、お住まいにとって重要な役割を担っています。
しかし、経年劣化により漆喰が傷むと瓦のズレや割れといった深刻な問題を引き起こす可能性があるため、定期的なメンテナンスが必要です。
この記事では屋根の漆喰が劣化することで起こるリスクや補修方法、費用相場、施工事例まで詳しく解説します。
お住まいの屋根が瓦屋根の方は、ぜひ最後までご覧ください。
瓦屋根に詰められている漆喰の役割とは
漆喰は波状の瓦の隙間に詰められており、瓦屋根において以下のような役割を担っています。
- 瓦の固定と安定化：屋根の頂上である棟(むね)部分の瓦を固定し、強風や地震による瓦のズレを防いでいます。
- 雨水の浸入防止：瓦と瓦の隙間を埋めることで雨水が屋根内部に浸入するのを防ぎます。特に棟部分は雨水が集中しやすい場所であり、漆喰による防水機能が不可欠です。
- 葺き土の保護：漆喰は瓦を固定する土台である葺き土を覆い、雨風による流出や劣化から守っています。
漆喰の劣化症状
漆喰は紫外線や雨風に長期間さらされることで徐々に材質が脆くなり、以下のような劣化症状が発生します。
初期段階の劣化症状
・変色・カビの発生
白い漆喰が黒ずんでいる、緑色のカビが発生している場合は漆喰が水分を含んでいる証拠です。
カビはジメジメと湿気の多い場所にしか繁殖しないため、カビが生えるということは漆喰の防水機能が低下していることを表しています。
・表面のひび割れ
漆喰表面に細かいひびや大きな亀裂が入っている状態です。初期段階では髪の毛ほどの細いひびですが、放置すると深く広がります。
中期から後期の劣化症状
・剥離や欠落
漆喰が劣化して剥がれ落ち、完全に欠落して葺き土が露出すると雨水が建物内部に浸入する恐れがあります。
・膨らみや浮き
漆喰のひび割れや剥がれが進行すると内部の葺き土が影響を受け、漆喰が浮いたり膨らんだりします。
隙間から入り込んだ雨水によって葺き土が膨らみ、葺き土が湿って膨張したり、漆喰と葺き土の境目に隙間ができて浮いてしまいます。
漆喰の状態が見えない、劣化が起こっているか分からない場合は築10～15年経ったら点検を依頼しましょう。
屋根の頂上付近に詰められている漆喰は地上からは見えにくいものです。
知らず知らずの内に劣化して雨漏りが起こってから気が付くということのないよう、定期的に業者に点検をしてもらうことをおすすめします。
漆喰の劣化を放置するとどうなる？
劣化症状が起こっているにも関わらず、長期間気が付かない・メンテナンスを怠ると、以下のようなトラブルに発展することがあるため、定期点検やできるだけ早めの補修工事をおすすめします。
瓦のズレが起こる
漆喰が劣化すると瓦の固定点が失われ、強風時に瓦が動きやすくなります。
一度ズレた瓦は元の位置に戻らずに隙間が拡大し続けるため、早めの補修が必要です。
特に棟部分の瓦は漆喰によって支えられているため、劣化が進むと以下のような問題が発生します。
連鎖的なズレ：一箇所の瓦がズレると隣接する瓦にも影響が及び、連鎖的にズレが広がります。
雨漏りリスクの増大：瓦がズレることで瓦と瓦の重なりが不十分になり、雨漏りが起こって修理費用が高額になる恐れがあります。
瓦が割れる
漆喰の劣化によって葺き土が流出すると、瓦の下の支持が不均等になります。
その状態で瓦に荷重がかかると応力が一点に集中し、割れが発生します。
また、漆喰の劣化部分から水分が浸入し、冬季に凍結すると膨張して瓦に圧力をかけます。
この凍結融解の繰り返しが瓦が割れる原因になります。
瓦が割れると隙間から雨水が入り込んだり、割れた瓦が下に落ちたりする恐れがあります。
そうなれば車両や物に当たって傷が付く、通行人の頭に落ちるなど、大きなトラブルになりかねないので軽視できません。
雨漏りが起こる
漆喰が劣化すると、やがて雨漏りを引き起こします。
屋根から浸入した雨水は天井裏の断熱材を濡らし、木材を腐らせます。
また、カビの発生による健康被害やシロアリの発生リスクも高くなるので大変危険な状態です。
さらに長期間、雨漏りの状態が続くとは柱や梁などの構造材を腐らせ、建物の耐震性を低下させます。
早期に漆喰を補修すれば数十万円で済む場合でも、放置して屋根全体の葺き替えが必要になれば数百万円の費用がかかることもあります。
メンテナンス方法と費用相場
漆喰の劣化は定期的な詰め直しが理想で、早期発見・早期対処をすることで大がかりな工事を避け、建物の寿命を延ばすことができます。
とは言え、知らず知らずの内に棟瓦のズレ、雨漏り、瓦の割れなどが起こるケースもありますので、それぞれの状況に合わせた補修を行いましょう。
ここでは瓦屋根の主な補修工事について紹介します。
記載した費用は施工面積や使用材料によって変動するため、あくまで参考程度になさってください。
漆喰の劣化は漆喰詰め直し工事
棟瓦の歪みや雨漏りが見られない場合は既存の漆喰を撤去し、新しい漆喰を詰め直す工事を行い、劣化状態をリセットさせます。
既存の漆喰を撤去せずに上から重ね塗りをするケースもありますが、古い漆喰ごとボロッと剥がれる恐れがあるため、基本的には詰め直し工事がおすすめです。
漆喰詰め直し工事の費用相場：約4,000～8,000円/m
30坪ほどの一般的な大きさのお住まいだと棟の長さは約15～30mです。
長さ15m程度だと約6～12万円、20m程度は約8～16万円、30mは約12～24万円が目安です。
部分的な瓦のズレや割れは補修工事
部分的な瓦のズレや割れは数枚程度なら比較的低コストで済みます。
割れている場合は基本的に新しいものに交換しますが、同じ瓦が廃盤になっているなどで入手できない場合、交換した箇所が目立つこともあります。
部分補修の費用相場：約1～5万円/枚
瓦をめくって下地まで傷んでいる場合は下地の交換が必要になり、下地交換のための追加費用が発生します。
棟の歪みは棟瓦積み直し工事
漆喰が劣化し、棟瓦に歪みが発生している場合は棟瓦積み直し工事を行います。
棟瓦を一旦取り外し、漆喰を撤去してから葺き土を入れ替え、瓦を戻して新しい漆喰を詰め直す工事です。
棟瓦積み直し工事の費用相場：約10,000～20,000円/m
棟の長さが15m程度だと約15～30万円、20m程度は約20～40万円、30mは約30～60万円が目安です。
雨漏りは葺き直し工事
雨漏りが起こっている場合は下地まで劣化しているため、既存の瓦を部分的、または全て取り外して下地を交換します。
下地には一般的にルーフィング(防水シート)と、その下には野地板という建材があります。
葺き直し工事の費用相場(野地板補修無し)：約70～90万円
葺き直し工事の費用相場(野地板補修有り)：約90～110万円
上記は一般的な大きさ(30坪程度)の戸建て住宅の場合の費用相場です。
施工面積や使用材料のグレードなどにより、費用は変動します。
『住まい修繕本舗さいたま』の施工例
当社、『住まい修繕本舗さいたま』では漆喰工事や葺き替え工事など、屋根工事の実績が多数ございます。
ここでは実際に行った施工内容を具体的に紹介します。
さいたま市・S様｜瓦屋根の漆喰詰め替え工事
Before・After
S様邸では漆喰が経年劣化により剥がれ、内部の土台となる葺き土が剥き出しになっていました。
今回が初めての漆喰メンテナンスとのことでしたが、幸いなことに瓦の大きな歪みや瓦を固定する緊結線のゆるみ・切れはまだ発生しておらず、劣化状態は比較的軽微です。
施工中の様子
古い漆喰は丁寧に撤去しました。新しい漆喰が剥がれるリスクを最小限にするため、表面をきれいに掃除して整えます。
新しい漆喰は薄すぎず厚くなりすぎないよう慎重に詰め直していきました。大きなトラブルが起こる前に施工できて何よりでした。
＼詳しい施工事例はこちら／
飯能市・A様｜棟瓦積み直し工事
Before・After
A様邸の屋根は棟瓦のわずかなズレと緊結線の劣化があり、雨漏りや瓦が崩れてしまうリスクが高い状態のため、棟瓦積み直し工事を提案させていただきました。
施工中の様子
既存の瓦を傷つけないよう丁寧に撤去し、古い漆喰をキレイに取り除いて清掃をしました。
完成した土台の上に、内部の棟土が漏れ出さないよう漆喰を詰めて蓋をしました。使用した漆喰は耐久性と防水性に優れ、ひび割れにも強いシルガードです。
棟土を入れ直して土台を作り、その上に小舞(こまい)という強度を高める板を乗せて棟が水平になるよう調整しています。
瓦を戻し、強風や地震で落ちてしまわないように、銅線で瓦同士をきつく締め、しっかり固定しました。一番上の冠瓦をビス止めし、鬼瓦との隙間に気密性・防水性の高いシーリング材を充填して完成です。
＼詳しい施工事例はこちら／
屋根のことなら『住まい修繕本舗さいたま』へご相談を！
瓦屋根にとって漆喰は建物を守る重要な要素であり、その劣化は瓦のズレや割れといった深刻な問題を引き起こします。
早期発見と早期対応を行うことで大規模な修繕を避け、建物を長期間保護することができるため、築年数や前回のメンテナンスから10年以上経過している場合は専門業者に点検を依頼しましょう。
当社、『住まい修繕本舗さいたま』は無料でお住まいの点検、お見積もりを承っています。
点検の状態に応じて最低限必要な工事、長い目で見てコスパが良くなる工事など、さまざまな目線でベストな施工方法を提案いたします。
「瓦がズレている気がする」「とりあえず見てほしい」そんなご相談も大歓迎です。
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